90年代後半、イギリスに語学留学していた時、ホームステイ先からバスに乗って学校に通っていた。家の近くのバス停の時刻表には、1時間に3本と書かれているだけで細かい時間は載っていない。ずいぶんおおざっぱだなと思ったがいくら待ってもバスが来ない。遅刻するかもしれないと思ってひやひやしているとバスがやってきた。しかも、三台連なって。さらに一台目はぎゅうぎゅうだが、三台目は、すかすか。それは一日だけではなく毎日繰り返されている光景だった。イギリスというのはずいぶんのんびりした国だな~、20分毎に運行しろよと思っていた。しかし、ある日、バスの出発点に行って驚きの事実を発見した。実は、スタート時点では20分毎に運行されていたのである。
日本に帰ってみると実は日本でもバスは連続してくることが多いことに気が付いた。しかも、先頭のバスは混んでいて最後のバスはあまり人が乗っていないこともイギリスと同じだった。
このころからなぜバスは続けてくるのかということに疑問を抱きだした。
この現象の背後には、交通機関の定時運行にかかわる法則が隠れていました。しかも日本の鉄道ではそれを避けることによって定時運行を実現しているということもわかりました。
■バスが続けてくる仕組み(悪循環の仕組み)
シミュレーションのモデル
- A,B,C,Dの4つのバス停に5分おきにバスが走っているとする。
- 各バス停には20秒に1人乗客が来ると仮定する。
- 一人乗車するのに5秒かかるとする。
- 定刻であれば、各バス停の間は4分で到着するものとする。
すべてのスタートを8:00とします。0号バスは定刻通りA:8:00 B:8:05 C:8:10 D:8:15に出発したものと仮定します。
■思考実験スタート
1号バスは、バス停Aを1分遅れて8:01:00に出発した。(乗客15人)
Bのバス停まで4分かかるので到着時刻は、8:05:00
8:00スタートとするとBバス停での乗客は、3人/分×5分=15人
乗車にかかる時間は、5秒×15人=75秒
それゆえ、バスの出発時刻は、8:06:15(乗客延30人)
Cのバス停まで4分かかるので到着時刻は8:11:15
0号バスは8:05:00に出発しているので6分15秒、乗客数は3人/分×6分=18人
乗車にかかる時間は、5秒×18人=90秒
それゆえバスの出発時刻は、8:12:45(乗客延48人)
Dのバス停まで4分かかるので到着時刻は8:16:45
0号バスは8:10に出発しているので6分45秒、乗客数は3人/分×6分45秒=20人
乗車にかかる時間は、5秒×20人=100秒
それゆえ、出発時刻は、8:18:25(乗客延68人)
2号バスは、バス停Aを定刻の8:05:00に出発した。(乗客15人)
バス停Bまでは4分かかるので到着時刻は、8:09:00
1号バスは、8:06:15に出発したので乗客は、3人/分×2+3人=9人
乗車にかかる時間は、5秒×9人=45秒
出発時刻は、8:09:45(乗客延べ24人)
Cのバス停まで4分かかるので到着時刻は8:13:45
1号バスは8:12:45に出発しているので1分、乗客数は3人/分×1分=3人
乗車にかかる時間は、5秒×3人=15秒
それゆえバスの出発時刻は、8:14:00(乗客延べ27人)
Dのバス停まで4分かかるので到着時刻は8:18:00
1号バスは8:18:25出発なので2号バスは前のバスに追いついた。
■この現象の概略
前のバスが遅れ出すと次のバスとの時間が縮まるので次のバス停で待っている乗客が少なくなる。乗車時間も少ないので前のバスとの差がさらに縮まるという負の強化サイクル(悪循環)が起こり結果的に前のバスに追いつく。
これを繰り返していくことによって、バスが団子状に連なってやってくるという現象が説明できます。また前のバスはぎゅうぎゅうで後ろのバスはスカスカという現象も説明できました。
次回は、こうした事態を解消するための方法を考えたいと思います。