稲田哲将 研究所

オープンデータを利用した不動産の有効活用と物件を探す 人の合理的な選択による都市構造の最適化


はじめに

この投稿は、「ビッグデータ・オープンデータ活用推進協議会」が2015年1月25日に行った「ビッグデータ・オープンデータの活用アイデア・アプリケーションコンテスト」で発表した内容に加筆修正して改めて発表するものです。
当時のスライドは、SlideShareにて公開されています。
オープンデータを利用した不動産の有効活用と物件を探す 人の合理的な選択による都市構造の最適化
また、2017年3月に国土交通省が公開したGeneral Transit Feed Specification(以下GTFS)の拡張である「標準的なバス情報フォーマット」についても触れたいと思います。

疑問:日本の不動産サイトでは鉄道路線検索はあるがバスの路線検索ができないのはなぜか?
日本の多くの地方都市では、鉄道よりもバスの方が公共交通機関として重要な役割を担っています。
しかしながら日本の大手不動産検索サイトでは、バスの路線検索ができません。
現代社会において、検索できない(あるいは検索結果一覧の後ろの方に出てくる)物件というのは情報の世界では存在しないに等しいと言えます。
バスの路線検索ができないためにバス停の近くであるにも関わらず、駅から遠いという理由で検索が難しい物件が多数存在します。

不動産サイトを検索するユースケースから物件を探す理由と検索条件を考える。

不動産サイトで物件検索するシチュエーションを考えてみましょう。

・転居する主な原因は以下のものがあります。

  1. 戸建、マンションの購入
  2. 転勤、就職、転職、進学
  3. ライフスタイルの変化(一人暮らし、結婚、同居、家族の人数の変化など)
  4. 物件、家賃、周辺環境、通勤通学等に起因する不満や不足(部屋が狭い、設備が古い、不便)

・検索時に指定する主な条件

  1. 家賃、物件価格
  2. 間取りと広さ
  3. 設備
  4. 築年数
  5. 通勤通学の方法と距離
  6. 学校区
  7. 地名

このように見ると検索条件は、物件の属性(条件1~4)、日々の生活環境(条件5~7)に分けられます。
生活環境で学校区や地名検索を行う場合、すでにその地域に土地勘がある人(地名、学校名を知っている)でないと検索するのは難しでしょう。
また、他にいい物件があったとしても知っている地名、学校区の範囲でしか検索をおこわないと考えられます。
例え近隣であったとしてもマイナーな地名は地名検索で選択される機会が相対的に低くなることが予想されます。
さらに、学校区で検索したとしても、統一したオープンデータがないために検索結果から漏れる物件が出てきます。
(「○○小学校」「○○小」など文字列として登録されているため)

こうした理由から、「路線検索」が土地勘がない地域の物件で指定できる唯一の生活環境の条件となってしまうのです。

この投稿では、バスの路線とバス停データをオープンデータ化することで検索可能な物件を増やすとともに他の産業の利用価値を考えていきたいと思います。

バス路線データ利用のハードルを上げている原因

地方都市においては、鉄道よりもバスの方が公共交通機関の中心を担っていることが多くあります。しかし、バスは、鉄道に比べて利用のハードルが高い乗り物です。

まず第一に鉄道は地図に載っていますが、バス路線は掲載されていません。

地域によっては複数のバス会社があり、それぞれバス停が異なる。

バス会社単位で見るとバス停は工事などで意外に頻繁に場所が変わっている。(情報の正確性の保証の課題)

他にもバスは路線や地域により乗り方が異なる点もバス利用のハードルを上げている原因の一つです。

続く


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