稲田哲将 研究所

エネルギーと経済性


世の中には資源やエネルギーは想像以上にたくさんある。例えば、金やウランは海水中に膨大に含まれるし、日本近海にはメタンハイドレードが豊富にある。これらのことは数十年前から分かっている。しかし、現時点で産業化されてはいない。

■日本には意外と石炭がある。

昔からあるもので言えば、石炭も九州や北海道には沢山あるが閉山が相次ぎ風前の灯火である。エネルギー転換政策が実施されたころ日本の石炭は、海外産に比べて3割ほど値段が高かった。露天掘りは採掘コストが安く、海上輸送はコストも非常に安い。また公害意識の高まりとともに排気や廃棄物に関する規制が厳しくなり、それに対応するためのコストもかかるようになった。こうした価格差から日本の石炭は消えていった。

■バイオエネルギー

また、バイオネルギー分野では石油やジェット燃料が作れる微生物も発見されている。特に石油を作る微生物は、以前1リットル8000円かかっていたものが80円台で作れるようになった。それでもあともう少し安くなければ誰も買わない。税金などを考慮に入れると40円台にならなくては採算に乗らない。

■需要と供給

経済性の原理で言えば、レアアースの禁輸とその後の値動きに興味深い事例がみられる。

中国がレアアースの禁輸を実施したところ価格が2倍以上に跳ね上がった。すると他の国で採算に乗らなかったレアアースの鉱山の採算が合うようになり、復活していった。また、産業界では、代替物を利用するようになった。全体として中国のレアアースに対する需要は減り、高値安定の状態で現在に至っている。

■資源の経済性のパラメーター

  1. 技術革新によるエネルギー取り出しコストの低減
  2. 廃棄物処理費用の組み入れ
  3. 補助金や税金などの経済政策

例1:シェールガスは以前から存在は知られていたがここ10年ぐらいで開発された新たな掘削方法により低コストで採取可能になった。

例2:現在の原子力発電は、放射性物質の廃棄コストが考慮に入れられていないため安く見えるが、数千年もの間放射性廃棄物を管理するコストを考えると本当に安いのかは議論の余地がある。

例3:太陽光発電は、通常の火力発電よりも高コストであるが政府の補助金や割高な買い取り制度に支えられてシェアを伸ばしている。

■公害の輸出

日本では鉱毒問題が発生するために採掘した時の採算が合わないが、海外では法律が未整備なため低コストで採掘できる資源がある。コストが安い方に自然と流れるのでそうした資源は日本から海外のそうした地域に移転する。国内はきれいになるが海外のそれらの地域に汚染が移動しただけなので抜本的な解決ではない。こうして海外に公害が移転することを公害の輸出と呼ぶ。

原発事故以降、再生可能エネルギーが盛んにもてはやされているが経済性に真っ向から取り組まないと大きな判断ミスを犯す可能性がある。別に原発に賛成しているわけではない。原発問題を考える時も廃棄コストや事故のコストをきちんと考慮に入れる。事故の原因と回避策を徹底的に考えるということをしなければ再稼働してはいけないと考えている。また事故当初、自分が思っていたよりも状況が深刻だと考えている点も付け加えておく。