稲田哲将 研究所

福岡空港のキャパシティーオーバーについて考える。(2)


この記事は、福岡空港のキャパシティーオーバーについて考える。(1)の続きです。

短期間で福岡都市圏の空港のキャパシティーを高める方法は、福岡空港、北九州空港、佐賀空港の一体運用である。

一回目でも書いたように成田、羽田の距離を考えると物理的な距離は、実はそれほど違いがありません。三つの空港を一体運用すれば、滑走路が三本になったのと同じ効果があります。それぞれの空港に役割を持たせたブランディングをすることで効率的な運用ができることが考えられます。

たとえば、

北九州空港は、24時間利用できる特徴を生かして長距離海外便と他の24時間空港と結ぶ「24時間眠らない空港」としてブランディングする。海外長距離便は、出発地と到着地の時刻調整が難しいのですが、24時間空港であることで到着時の時刻を気にする必要がなくなります。国内にいくつか24時間空港があるのでそこと連携して国内便を24時間化することも可能です。そんなに真夜中でなくとも目的地の空港がオープンする時間に着陸する便を設定することが可能となります。

佐賀空港は、「LCC・観光空港」としてのブランディング、福岡空港は意図的にブランディングしないという戦略をとる。

佐賀空港がLCC空港を標榜すれば、例えばLCC航空各社が共同で利用できる整備場や共通で使える部品の在庫を保存する施設が必要となるだろう。こうした設備を充実させることでLCC航空各社が佐賀空港を起点に就航するようになるだろう。歌手の全国ツアーのスタート地として立候補することによって練習日も含めて会場を利用してもらうことで施設の利用率を上げている施設もある。佐賀空港も同様に整備施設に困っているLCC空港に整備施設を提供することで拠点空港として使ってもらえる可能性が出てくる。朝一番に佐賀空港から海外便も含め全国に飛行機が飛び立つようになれば利便性はかなり上がるだろう。

北九州空港には24時間移動可能な交通網とショップの充実。

福岡空港はむしろ着陸料を上げて高級路線に走ったほうがいいだろう。そうすることで低価格路線が分散する。

考えれば誰でも思いつくことだが、現在そうなっていないのはいくつかの壁があるからである。

一番は交通機関の問題である。福岡を中心に考えた場合、佐賀空港に行くのも北九州空港に行くのもバスの路線がない。その為、実際以上に両空港が遠くに感じられているのである。言い換えると目的地までの移動に時間がかかるうえに行き方がわかりにくいことによって遠く感じられているのである。

■心理的距離(時間距離)を短くするために

費用をかけずに両空港に対する時間距離を短くする方法は、佐賀空港北九州空港と福岡を結ぶバスを運行することである。時間の間隔は10分に1本ぐらい。鉄道と違い、バスであれば24時間かも設備的には簡単である。福岡はバス文化が発達した地域でもあり、親和性も高いと思われる。

待ち時間が少なく便利で分かりやすくなれば利用者の心理的距離は縮まる。

■バスの運行費用

バスの運行費用はどれぐらいかかるだろうか?まずは、必要なバスの台数を考えてみよう。

北九州空港の場合、福岡発を1時間に6本×24時間=144本の運行とすると、出発地と到着地の整備時間も入れて4時間で往復するとすると一日6往復できる。そこで必要なバスの台数は、144本/6往復=24台

45人乗りのバスの貸し切り料金が8時間で10万円ぐらいなので一台当たり1日30万円

つまり一日の運行費用は、24台×30万円=720万円あれば貸し切りバスとして利益が出る。

さて、売り上げの方は、乗車率を50%、片道1100円とすると

乗車可能人数は、(144本(福岡→北九州)+144本(北九州→福岡))×45人=12960人

乗車率50%の場合の売り上げは、

12960人×50%×1100円=712.8万円

大体このぐらいあれば、トントンのレベルになるということがわかる。

同様なことが佐賀空港でも計算できる。佐賀空港の場合は、24時間ではないので必要なバスの台数も少ないだろう。しかし、50%程度の乗車率は必要という点は変わらない。

■受益者はだれ?

しかし、これでもまだ楽観的で、バスの運行は最初の数年は赤字であることが予測される。この場合、そのお金をだれが出すかということが問題になる。この制度で得をするのは、だれだろうか。福岡市民?福岡、九州にくる観光客?離発着が増えた北九州空港?佐賀空港?それぞれが受益者にも見えるが、特に空港はそれぞれの経営が異なるため利害が対立している。

■バスの運営費用を生み出す方法の一例

ここでこうしたお金を生み出す案を一つの案考えてみた。

  1. 3空港の滑走路と空港設備の利用権を持った共同会社(会社A)を作る。
  2. この会社は利用料として賃貸料を支払う。この時、支払先になる会社をもう一つ作る(会社B)。
  3. この会社は、空港設備の所有と空港の土地の所有と空港の内部にある私有地所有者に借地料を支払を行う。
  4. 会社Aが支払う賃料を黒字になるレベルに下げてもらい意図的に会社Bを赤字にする。
  5. この会社Bの赤字を空港整備特別会計で支払えるようにする。

こうすることによって3空港の利害関係の対立がなくなり、会社Aが黒字化できるので、その黒字額でバスの運営費用が赤字でも運営が続けられるだろう。

また、新たな空港を作る場合に比べて使う空港整備特別会計の金額も少なくて済むだろう。

この案であれば追加設備投資もバス関連だけで済むので新空港を作ることに比べて少なくて済み。必要なものが少ないので短期間で実現できると思われる。

北九州空港と佐賀空港の少なくとも離発着が増えれば、それぞれの空港も今に比べて赤字が少なくなるはずである。また北九州空港が便利になれば、山口県の西部や大分県の北部の人、今まで福岡空港に来ていた筑豊の人たちは、北九州空港を利用したいと思いそこにバスの路線を走らせることになるだろう。佐賀空港も佐賀県内だけでなく福岡県からも乗降客が増えるだろう。

このように今使える空港資源を利用すれば、緊急に拡張をする必要がある福岡空港のキャパシティーを短期間で増強できると思うのである。